摩 耶 姫 伝 説    (伝)

むかし、この滝から5〜6里ばかり川下に巨人のような大きな手でひっかいたような高さ15丈(4〜5メートル)ぐらいあろうか、このような断崖があり天狗の仕業だと、その近くに天狗様をお祀りして五社天狗と呼んでいます。 

 その近くに若夫婦が何不自由なく仲よく恵まれた生活をしており近所の人がうらやむほどでしたが、どういうことか、子宝に恵まれず子供がほしくて毎日神棚と仏だんにお祈りをしておりました。
 と、ある日だんなさまが夕食後にねむくてしようがないので、いろりばたでうたたねをしていました。しばらくすると白髪の老人が長い杖を持って現れ、持っている杖で北の方角を指して『この谷の奥の四万という所に温泉が湧いてそこに薬師様があるから、その薬師様へおまいりしておねがいしてみよ』と言って消えてしまいました。はっと思い、目をさましてこのことをかみさんに話すと『これは天狗様のお告げだ』と、いてもたっても居られず、早速四万の薬師様へ行き、二人で『子供を授けてください』と薬師の湯に入りながら7日の間おこもりをしてお願いいたしました。 すると、そのかいあってかその翌年に玉のようなかわいい女の子が生まれました。

 名前をお坊さんに頼むと、その坊さんは薬師様にお願いして授かった子だから、仏さまにあやかり『摩耶』とつけようということになりました。夫婦は『かわいくて、かわいくて目の中に入れてもいたくない』のたとえのように育てました。大きくなるにつれてその美しさは増すばかり、あまりの美しさに誰言うとなく『摩耶姫』と呼ぶようになりました。やがて摩耶姫が年ごろになると、ほおっておくわけがありません。近所の人はもちろん遠くからも縁談が降るように来ます。だが摩耶姫の気にいった男は一人も現れません。

 ある日、摩耶姫が近くのお不動様にお参りすると、一人の老女が現れて、『あなたは美しい人だ、だんな様はいるのですか』と聞くので『いません』というと、その女の人は『それでは四万の薬師様の奥に大きな滝があるが、そこへ行ってごらんなさい』と言ってくれました。摩耶姫は半信半疑でしたが、翌日良い天気なので新緑の谷を小鳥の声を聞きながら登って滝のところまで行きました。しばらくの間、滝の水の落ちるのをながめ、大きな音を聞いていました。が、何も変ったことはありません。やっぱり夢だったのだと、あきらめて帰り始めました。5〜6間も歩いたと思うと『ガサガサ』と大きな音とともに鹿を追ってきた男が目の前に立ちふさがりました。はっと驚き見上げると今まで見たこともあったことのない素晴らしい男でした、しばらく顔を見合わせていましたが、やがて摩耶姫はいままでのことを話します。

 男は『何か良くわからないが不思議な夢を見た』と言うのです。二人はこれは『お不動様の引き合わせ』と、これを機に意気投合するようになり将来をちぎる仲となったのです。両親も反対するわけもなく二人は晴れて結ばれ、仲むつまじく良く働き人のうらやむ家庭を作ったのです。
 のちに滝にところに石の不動様をつくりおまつりし感謝の気持ちを忘れなかったと言います。この不動を滝不動と呼んでいます。
 これからこの縁にちなみ、この滝を摩耶の滝と名づけ、四万温泉の名勝となり、雄滝と雌滝があり水量も素晴らしい滝です。


※滝不動は、現在『摩耶不動』と呼ばれ、日向見薬師堂の境内にまつられており、いまも参拝者が絶えません。
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